あなたの血管は大丈夫ですか?

 厚労省の統計によると、日本の死亡者の1/3が心疾患や脳血管疾患など心血管系の疾患により死亡している。すなわち、3人に1人が血管のトラブルに起因する病気で死んでいることになる。この血管の異常は、動脈硬化が進行した結果として生じるのであるが、厄介なことにその動脈硬化は全く自覚症状はなく、日常生活の中ではその進行を認識する手立てもない、時限爆弾のような病気なのである。
 それでは、どのようにしたら動脈硬化の進行を評価することができるのか。それに対する一つのアプローチとして、FMDという指標が学会でも注目されている。FMDとは、腕を5分間締め付けて離した後の血管の拡張度合を表す指標であり、元の血管径に対して拡張した割合がパーセンテージで表わされる。正常であれば、血流を多く流そうと血管は大きく広がるのに対し、血管の内皮細胞の機能が落ちてくると血管の拡張度合は小さくなり、動脈硬化が進み始めるとほとんど反応しなくなる。
 コレステロールがたまると血管が詰まるとよく言われるが、実はコレステロールが蓄積し、石灰化したらもう元に戻すことはできない。そもそもコレステロールが蓄積しにくい、健康な血管の状態を保つ必要がある。前述のFMDは、その血管の健康状態を知る重要な目安となるのである。
 では、日本人におけるFMDが正常な値とはいったいどれくらいなのか。その基準を示す発表が本日の心臓病学会でなされた。966人の健常者のFMDを計測した結果、50歳で年齢を区切った上で、50歳以下では平均6.5%、女性では平均8.8%、50歳以上では男性平均5.6%、女性平均5.5%という値となり(リスクファクターなしの場合)、おおよそ6%を健常者の目安にできるだろうということである。
 詳細な議論については今後の更なる研究の進展に期待するが、簡単に測定できる装置の開発がこの研究に大きく寄与している。お世辞とはいえ、発表中の質問で研究ではなく装置を褒めるコメントがあったことはその証左といえるだろう。
 現在はまだ、最先端の大学病院や一部のクリニック等でしか測定できないが、将来は人間ドックの検査項目に加えられ、毎年FMDの値にも一喜一憂する時代が来るかもしれない※。

※ 08年9月発行の健診判定基準ガイドライン[改訂新版]には、今後の動脈硬化ドックとして考慮すべき検査項目としてFMDが取り上げられている。
http://mbc.meteo-intergate.com/bookcenter/public/item/mbc/item77268.html