産まれる前のことは覚えているのか?

 チビが妻の実家から帰ってきた。産まれる前は、体重が少なくて妻が緊急入院するほどだったのに、母乳の効果か産まれてからはみるみるうちに大きくなり、今やずっしりと重く、手足もはちきれんばかりとなってきた。本当に赤ちゃんの成長の早さは驚くばかりである。

 さて、最近は科学の進展により、胎児に対する環境の影響や、生後直後の脳機能の発達に対する知見が蓄積されてきており、赤ちゃんは思ったよりも早い時期から人間の声を認識し、影響を受けていることが分かってきている。

 特に胎教の効果はよく言われているが、そもそも本当に外界の声や音は聞こえているのだろうか。これについては、お腹の中と似たような構造物を人工的に作ったり、胃を子宮に見立ててたりして、挿入したマイクで音を拾う実験が行われているそうだ。結論としては、残念ながら父親の声は人体や羊水に吸収されて言葉としては認識できず、ただ低い音が聞こえるだけ。一方母親の声は骨伝導により比較的クリアに言葉として聞き取れるとのこと。

 それでは、その生まれる前に聞いた言葉を覚えているということがあるのか。この疑問に決着をつけるべく、ひとつの実験を行っている。実は、産まれる前に勝手につけて何度も呼びかけていた名前があるのだが、産まれてからはその名前は一切呼んでいない。且つそれは世の中にない単語で奇抜すぎるため、誤って他の人から呼び掛けられたり、テレビやラジオなどで耳にすることもあり得ない。

 妻は気に入らない名前であったが、彼女も繰り返し口に出していたため、確実に骨伝導により単語として胎児にも聞こえていたはずである。

 確認するのは、2歳の誕生日を予定している。

 さてさて、この名前をチビは覚えているのだろうか。